おいたま温泉 賜の湯

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2018年04月05日

別れの季節

作家 沢木耕太郎さんの エッセイより

「ある駅で、母と娘が乗り込んできて、私の前の席に座った。

セーラー服姿の娘は、当時16歳だった私と同じような年頃とおもえた。

 窓の外には見送りの人たちが来ている。

やがて列車が動き出すと、涙を浮かべていた母と娘は、見送りの人たちに

何度も頭を下げ、手を振った。

 ところが、列車がプラットホームから離れ、駅の外の田園地帯に出てからも、

その母と娘は手を振りつづけている。

----------どういうことだろう?

不思議に思った私が、二人の視線の先にある窓の外に眼をやると、

沿線の田園の中にポツンポツンと人が立っているではないか。その人たちが、農作業の手を休め、列車に向かって

手を振っていたのだ。

 恐らく、そこからでは列車の中の母娘がどこに座っているかは見えなかったと思う。

しかし、その時間の列車に乗ることはわかっていたのだろう。

彼らは、親娘が乗っているはずの列車に向かって別れの挨拶をしていたのだ」

 

胸をつかれるような別れのシーンに涙が流れた

 

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